駐車している自動車のタイヤを登山ナイフでザック切り裂いたり、ゴミ屋敷と呼ばれる鬱蒼とした民家に灯油をまいて放火して、彼は夜な夜な町を徘徊する。
引きこもり歴20年の人格障害者、40歳です。
幸いまだ大きな事件に発展してはいません。
とりかえしのつかない事件に発展する前に悪癖の器物破損と放火を治療しようと精神科医を受診させて、精神科医と対面させたのです。
状況を話すうちに、みるみる精神科医の表情は曇っていきました。
「これは境界性人格障害が混ざっているな」と精神科医。
正常な人格へと治療する事はかなり困難なことなのです。
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少年時代はマイペースで小生意気な子供だった
知能が高く身振り手振りでメリハリのはる話しぶりが彼の特徴でした。
子供にしては、少し大人びた雰囲気をたたえていたようです。
彼はいつも友達に取り囲まれていて、余裕しゃくしゃく、だれからも厚い信頼を得ていたのです。
友達らを魅了するのは、教師と対等関係を築いているところにもあったのです。
権威(教師)に対して取り入ろうという雰囲気はまったくないのでした。
マイペースで小生意気なガキといった雰囲気だが、そこが友人から一目置かれる存在なわけなのです。
付き合いが長くなるにつれ感じられる違和感とは
距離感がおかしい。
はじめのうちは魅力的に感じられていたのに、一緒にいるとどこか気持ちが落ち着かない。
彼と二人だけでいるときに、妙な息苦しさを感じる。
頭がいいから勉強でわからないところを教えてもらったりするには良い相手。
ピッタリ横について、わかるまで事細かく丁寧に教えてくれる。
ノートもコピーさせてくれるし、応用問題の傾向までも念入りに解説してくれる。
なんて、親切な人なんだ、と誰もが思うのだが、、、。
違和感は複数人で遊んでいるときに感じられた。
独占欲が強いのだ。
他の友人と二人で話しているところに割って入ってくる。
横にベットリと引っ付いて離れない。
境界性人格障害の人々たちは、対人関係に根源的な不安感があります。
自分以外の人間を信頼することができないのです。
だから、生きる拠りどころがない状態で漂っている。
そして、一方で常に見捨てられることを恐れている。
孤立を恐怖している。
だから相手との心理的距離を適切に取ることができない。
ベッタリと密着したくなり、すがりつきたくなるのです。
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境界性人格障害の衝動性
徐々に親密になるとか、人にはプライベート空間あるとかが分かりつつも、見捨てられる不安が常に付きまとっているから必要以上に相手に取り入るんですね。
本人も努力するわけ。
それが人へのプレゼントだったり、親切心だったり。
でも、度が過ぎてしまう。
相手は、こんな高価なもの貰うわけにはいきません、みたいにプレゼントを断るでしょ。
すると、そこで爆発するわけです。
頭の中の回路が2系あって;
◆ベッタリとくっついていたいが為にプレゼンタをした。
◆それを、過剰すぎるプレゼントだと断られた。
◆その瞬間に、なぜ私の心からのプレゼントをことわるんだ!なんて失礼な!
まるで、壁に当たって跳ね返ってきたゴムのボールのように、勢いよく帰ってきて心をえぐるのです。
そこからの衝動的な発言は言うに及びませんね。
この衝動性が最も大きな特徴で、本人もわかっていながら抑えきれないとうったえます。
人格障害は病気ではない、すなわち治療が難しい
衝動性が病気によるものであれば、病気のもとを断ち切れば直っていくのです。
躁病のイライラだって、病状の回復とともに改善する。
でも、境界性人格障害の売には、薬で衝動性を抑え込むしかできない。
本人がガンマできるところまで薬で興奮を抑え、あとは本人のガンバリで平素を装うとう形です。
だからとても辛いんです。
本人だって、そんな性格で生まれたくはなかったでしょ。
穏やかで、おおらかで、些細なことは笑って水に流す性格で生まれたかったわけじゃないですか。
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