「自分ひとりで決めちゃうから失敗したときに責められるんじゃないか。攻撃の的になる原因を自分で作っているんだよ」と責任のがれのプロは言うのです。
確かに彼は上手い。
成功すれば多くを引っ張って見事に乗り切ったと称賛される。失敗したときは、みんなで検討した結果だから、と責めを回避する。
会社の正規な上申手続きを踏んで手堅く事を進めているように見えなくもない。
でもムカつくのです。
卑怯者!くたばっちまえ、と吐き捨てたくなるのです。
観察してみれば何ひとつとして自分で決断していないのがよくわかるんです。
ここでは責任のがれのプロ(皮肉ったつもりのプロ呼ばわりです)について解説してみたいと思います。
責任のがれのプロは自分ひとりでは絶対に決めない
サラリーマンですから、大きな仕事を自分ひとりで好き勝手に決めるわけにはいかない。でも忙しいときに派遣社員を暫定雇用するとか、取引先の内情を考慮して少々の赤字商売をするくらいの決め事、課長なんだから独断で決めたらいいじゃない。
いちいち周りの人の意見なんか聞く必要ないでしょ。
自分ひとりの責任で決めたと言われるのが嫌だから何かにつけ周りを巻き込むんです。その意図は、失敗したときに責任を回避するためなんです。
綱渡りの綱の下に安全ネットを張るように、常に自分の身の安全だけは確保しておきたいタイプなんです。
失敗したときに文句を言ってきそうなのは誰か
そもそも敵を作らないのが最大の防御と信じているの。だから、ちょっとくらい文句を言われても腹を立てない。
もしくは腹をたてているのを表に出さずに押えこんでいるのかもしれないですね。
相手に不快感を与えないよう心がけているタイプなんです。
彼の口から「俺は誰々が嫌いだ」というのを聞いたことがない。誰とでも仲良しでいるよう努力し続けている。
でもトラブルが発生したときに、ねちっこく犯人探しをしてくるのが誰なのか察しは常につけているんです。トラブルによる損失がどれくらいであって、そのトラブルがなぜ発生したのかをまるでテレビドラマの刑事みたいにギリギリと溯ろうとするのが誰なのか。
だから、最初からあとあとの事を考えて厄介な人間ほど初めから巻き込んでおくんです。
ちょっと相談があって、とひと声かけておいて本番の会議にアドバザーとして出席を促す念の入れようなんです。
責任回避男は社員のあらかたの性格、性質をおとなしい無害な顔を装って、したたかに見抜いているわけなんです。
自分からは決定打はうたない
会議が佳境に入るにつれて、どんどんと発言を控えるようになるのも彼の特徴です。結論に直結しそうな意見は絶対に口に出さないの。
ここまでみんなで討議して、大方の意向が同じベクトルを示しているのだからまとめ役として結論に持ち込めばいいじゃない。
でも決めの方向に進めば進むほどだんまりを決め込むのです。後になってから、まだまだ別の考え方があったはずなのに強引に結論付けたと言われるのが嫌なんです。
ちょっとのリスクすらも背負いたくな人なの。だから決定打は別の誰かに委ねるんです。
アンタ何の為に会社に来ているの
近くで観察してて初めて分かるセコさなんです。
仕事って、やっているふりをしようと思えば幾らできるのです。
一人に一台パソコンが与えられていますから、まず立ち上げて画面を難しい顔で見入っていれば、それらしく見えるんです。
他人が作った企画書とか契約書とかを画面に出して見入っていれば、遠巻きには仕事しているんだなって。
でもね、1週間くらいちょこちょこ観察しているとヤフーで下世話なニュースを検索してみたり、スポーツの結果を見ているのがだんだんわかってくるの。こいつは暇なんだなあってつくづく思う。
仕事量が圧倒的に少ないから暇つぶしみたいな会議には喜んで参加する。それでいて、30分から1時間くらい残業して帰ってくんです。
管理職だから残業代がつくわけじゃない。ヒマだと疑われるのを避けるのが目的なんです。
部下が本気で残業してヒイヒイ言っているのに、それらを見殺しにして自分は仕事をするふりで時間を潰す毎日。
下手に時間が余っているから部下の仕事を少しでも手伝うなんて考えは全くない。そこには、仕事をするふりをしてパソコン画面を凝視するのと、部下を手伝って実務の複雑さに巻き込まれていくのと、どっちが自分にとって得なのか、天秤にかけているんです。
優しそうな面の皮を剥いてみれば、ずる賢こい顔面が見えてくるんです。
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