短期的な甘い判断
先日、取引先のある部長さんが60歳で定年退職を迎えられるとお聞きしました。
行動力、判断力、交渉力と多くの面で実力を兼ね備えた人物。
ただ、頑固者で仕事の出来ない部下を人目はばからず怒鳴りつけ、一切の妥協を許さない堅物であったのです。
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やっと定年退職かと胸を撫で下ろしながらも、部下たちの気がかりは、高年齢雇用安定法なのです。
60歳の定年期を迎えても、希望する者には65歳まで仕事を続けられるよう会社は雇用を継続しなければならないというものです。
「あの部長の性格からして、60歳定年でスパッと会社を去るだろう」
というのが大方の予測でしたが、それを覆して嘱託社員として居続ける事を選択されたのです。
そうなると、次なる関心は、嘱託社員の元部長に会社がどんな肩書きを用意するかです。
戦々恐々と固唾を呑みながらも、一部の社員が可能性を調べたと言います。
嘱託社員とは一種の造語で、正式には契約社員と同じ身分で、その人にいかなる権限を与えるかは会社の意志に委ねられるとの事。
だとすれば、会社の上層部が現状のままの権限を与え続け可能性も考えられる。
部下にとっては厄介な人物ではあるが、会社の上層部からすれば、部下の暴走を許さない頼れる人物と評されているのです。
あの恐怖政治が更に継続されるかもしれない。
元部長の肩書は甘くなかった
それから数週間が経過して部長の肩書きが営業部付きアドバイザーであると発表されました。
これまで嘱託社員として雇用延長を希望する人たちと同じ地位です。
勝ち組として生きてきた30数年のサラリーマン生活の最後の最後でミソをつけた、とみんな思ったそうです。
重要な会議への出席は当然許されない。
普段の仕事といえば、英文書類の翻訳や、若手社員向けの業務マニュアルの整理。
散々怒鳴りつけてきたかつての部下からは挨拶の一つもされることはなくなってしまった。
舞台を降りるタイミングを誤ったおかけで、勝ち組として最後まで『走り抜く』ことができなくなったのです。
人手で不足というけれど
就職戦線も売り手市場ですね。
それだけ人手が不足している。
でも、それが理由で定年退職後も65歳まで働ける環境を作ったわけじゃない。
誰もが知る通り、60歳から年金を支給できないという事情です。
その証拠に、人手が本当に不足している分野は、相変わらずブラック企業のように残業が緩和されていなですね。
学校の先生の勤務時間を減らす為の対策なんて全く整えられていない。
嘱託社員制度で会社に居残った人たちは、誰でもできる雑務を日がな一日続けるわけです。
無能な政治家のアホな政策を民間企業に押し付けただけの事なんです。ここにも詰めの甘さが如実に現れてしまった。
年金を60歳で支給できないから65歳まで働ける仕組みにした。
彼らが嘱託社員としてやっている仕事は雑務ばっかりで、日本企業の生産性の低さを拡大しているだけ。
ご存知の方も多いと思いますが、日本って先進国の中で飛びぬけて生産性が低い国なんです。
企業がお金を稼ぐのに関与する人の数のことです。
今の風潮からすると、あと数年で70歳まで働けることになる。そして、さらに生産性の低い国になっていく。
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人工知能はどんなふうに実用化されるの?
バランスが悪すぎると思いませんか?
◆人手不足で売り手市場
◆製造現場の海外移転で、国内が空洞化
◆年金払えないから65歳、70歳まで働ける仕組み
◆人工知能に仕事が奪われると懸念する
◆東南アジアからの雇用受け入れ
◆働き方改革とはいうものの、教育現場での人手が超不足
問題の一点を、短期的に見て判断しようとするから、いつまでたってもバランスが取れない。
ほんの10年前には、国内の製造企業が東南アジアや中国に製造拠点を移すことで、国内が空洞化するという危機感を抱いていました。
仕事が無くなつて、働きたければ海外に行かなければならないような状態に陥ると。
ところが上記からみると、仕事をこなす人手が足りていないように見えますね。
働き方改革で就労時間が規制されてきますから、ますます深刻化する方向ですね。
海外からの雇用受け入れが緩和対策となります。
人工知能に仕事を奪われる、という近未来の懸念はどうとらえるべきなのか。
人工知能は悪なのか、善なのか。やり方さえ間違えなければ雇用不足の大きな助けとなるのか。
*65歳、70歳まで働ける仕組み、は人手不足の解消ではなく、単なる年金問題対策と考えるべき。
まるで、「氷河期が再来する」と脅かしをかけた10年後には、温暖化問題をまことしやかに吹聴するようでもある。
詰めの甘い物言いが、まったくもって迷惑このうえないのです。
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