リアルホラー:狂人夫婦が真夜中の恐怖に叩きむ

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目次
 ホラー映画を楽しむ
  痛みという恐怖
  恐怖に落ちは要らない

 

ホラー映画を楽しむ

真夜中に一人でホラー映画観れますか?
闇と孤独が恐怖を増すのです。
勤め先の同僚が無理矢理、米国ホラー映画のDVDを見るようにと押し付けてきた。

いかにもショボそうなB級作品で、 有名俳優は誰一人として出演していない。
無論、監督の名前も聞いたことすらない。
映画研究同好会かなにかの暇な大学生が低予算で撮影したものかもしれない。

物には流儀や作法があるように、そんなショボいホラー映画にも、最高の状態で味わうための下準備があるそうだ。
ホラーには、闇と孤独が花を添えるらしい。

 同僚Bとの約束を守り、金曜日の夜中の1時、 録画しておいたそのB級ホラーの鑑賞を始めたのです。
妻は子供を連れて、短大時代の友人数名と温泉旅行に出かけている。
そこでホラーを見る作法が揃ったこの日に、 恐怖を堪能してみることにしたのです。

TVモニターに映し出されたB級ホラー。
一人の青年が自宅のリビングで分厚い本を読んでいるところからはじまった。
アメリカの田舎町。
漆黒の夜に降りそそぐ雨。
その闇を時折切り裂く稲光。
部屋の片隅のTVからニュースが流れる 殺人事件のレポートだ。

「大人二人を猟銃で殺害し逃走した犯人の自宅を捜査したところ、 地下室の作業場に設置されたバスタブから複数の人間のバラバラ死体、 犬、猫とみられる動物の死骸が発見された。
強い酸性液で半ば溶解された状態であったとの事。
一方、同じ地下の作業場の片隅には、脳のホルマリン漬けが標本のように陳列されていた」

普通に昼間観るぶんには、この程度じゃ全然怖くないのです。
でも真夜中の闇と孤独が恐怖をじわりじわりと増してくるのです。

オレをチキンに変貌させてしまっています。 はっきり言って、怖気づき始めているのです。
本来大好きなホラー&サイコパスの物語なのに。

DVDを止めずにいるのは同僚Bに、絶対最後まで観ると約束してしまったからなのです。
やせ我慢の意地なのです。
映画は無常にますます気味悪く進行していく。

「犯人は20年間、精神医療系の病院に収容されていて、つい数週間前に退院が許された」
と映画の中のTVレポーターが報道を続けている。

時計をチラッと見ると、映画が始ってからほぼ30分が経過。
同僚Bから昨日渡された封筒を開ける時間です。

だいたい奴の考えることは想像できる。
どうせ、おどろおどろしい台詞でオレをビビらせようという魂胆だろう。

『その映画は実話だよ。本当は日本で起こった事件で、それをアメリカがリメイクしたんだ』 とか
『映画を途中で中産すると、事件が現実になるという噂だよ』 とか、そんな手紙だろう。

封筒の口をちぎると、案の定、三つ折の便箋1枚が顔を出した。
そこには『映画観る前に仏壇に手合わせた?』と筆ペンで書かれていた。
なんなんだよ、俺んち両親とも健在だからこのうちには仏壇なんてねえし、 と思って便箋を畳み掛けたとき、裏面の文字が目にはいった。
表よりも小さい。弱弱しい文字。

『ゴメン、俺の言っているのは心の中の仏壇だよ。ご先祖様に僕をお守りくださいと心の中で手を合わせた?』
ゾッとした。身体全体鳥肌が総立ち。

裏面に小さい文字で書き添えるなんて卑怯だろう!
恐怖と怒りでパニックになりかかっている。
携帯電話に手を伸ばし、同僚Bの家に反射的にダイヤルしていた。
アノヤロー、趣味悪すぎるぞ!

「もしもし、もしもし」
「ハイ」と明るい声で奥さんが出た。
「あっ、奥さん。戸田です。ご主人の同僚の戸田です」
「戸田さん、どうなさったの、こんな夜中に」
「いや、ちょっとヤボヨウを思い出してしまって、忘れないうちにと。ご主人はもうおやすみでしょうか?」
「主人はいま、えーっと」
急に奥さんの声色が変化した。
音程の低い野太い声。
「主人はあんたの後ろにいるよ!」

心臓が止まるかと思った。
もしかしたらちびったかも。
「あっ、戸田?ゴメン、ゴメン」同僚B笑い声。
いつもの慣れ親しんだ声。正直ホットした。
「お前、大丈夫?」
「だっ、大丈夫だけど」
「声、震えてるよ」
「お前の女房、あれ何?」
「結構、役者だろう」
こうして、B級ホラーに打ちのめされた夜だったのです。

痛みという恐怖

命を落とすのはゴメンだけれど、どれくらい痛いのかだけ確かめてみたい。
そんな気持ちになりませんか?

ついついやってしまうことありますよね。
電車の扉に指先をわざと挟んでみたり、 目薬がわりにみかんの皮の絞り汁をたらしてみたり、 肘の皮を伸ばしてペンチではさんでみたり。

どれもこれも愚考であるものの、それが人間の複雑さなのです。
肘の皮は身体じゅうで一番、痛みに鈍感な部分なのです。
そして、いざ、これら愚考を試そう行動を起こす直前の、  あのドキドキ感がたまらないのです。
物凄く痛かったらどうしょうという気持ちが半分、  どおってことないに決まってると高をくくっているのが半分です。

いや~、人間ってなんてくだらない生き物なのでしょう。
痛さを楽しむなんて、なんてバカな奴なんだと思われる方も折られるでしょう。
しかしながら、痛さを楽しむ人間は人口的にみても多数はなのです。

韓国料理、四川料理、カレーライスなどなど、 辛さを売りにしている食べ物って世の中にあふれ返っています。
辛いもの大好気という人も大勢いらっしゃいますね。 あの辛さとういうのは、味ではなく痛みなのです。
舌で感じる辛さは痛覚で、甘い、しょっぱい、すっぱい、苦い、とは別物。

カレーライスの辛さを段階表示している専門店で、 一番辛いのを注文してみるとはっきり分かりますよ。
一口カレールーを舌の上に載せた瞬間、痛みが走ります。
当然、ルーの中には甘みも酸味も含まれていますから美味しいとは思いますが、
辛さMAXのカレーでしたら痛みが先立つこと間違いなしですね。

もしそれでも納得がいかない場合、腕にちょっとカレールーをたらしてみると 傷みを体感できるのです。
もし怪我のあとにできたカサブタなどがあれば、 それを少しめくってカレールーをちょいと載せてみる。
指先にささくれなどが出来ていれば、それを少しむしって、カレールーをチョイ、です。

話は少し変わりますが、かゆみを痛みで相殺する人いますよね。
蚊にさされてぷくっと赤くはれた部分につめを立てて、かゆみを消す人。
十文字を刻む人も結構いますね。
まさにかゆみと痛みの相殺効果なのです。
もし、たまたまカレーライスを食べていたら、その十文字の上にカレールーをチョイ。
ちなみに、かゆいの反対語は痛いなのです。

恐怖に落ちは要らない

1973年から1975年にかけて、雑誌週刊少年チャンピオンに、 『恐怖新聞』という物語が連載されました。
つのだじろうさんの原作です。

主人公のっ中学生・鬼形礼くんのもとに毎夜毎夜、どこからか恐怖新聞は配達されてきます。
そこに掲載された記事が、数日先の近未来を予言するという設定で、
予言内容が
「そんな事を知らせてきて、俺にどうしろというんだよ!」
っていうくらい生々しい意予言なのです。

親しい学校の友達が車にはねられて死んでしまうとか、知り合いの家が空き巣に入られた挙句、
放火されてしまうとか。
つまり、勇気をふりしぼって立ち向かえば、阻止できないこともない程度の事件なのです。
ただ、味噌はこの新聞に目を通すことで寿命が100日減ってしまう点。

これが、アメリカ大統領が狙撃されるとか、 西海岸全域に山火事が燃え移ってし合うとか、 巨大隕石がブラジルのど真ん中を打ち抜くとかでしたら、
100日分の寿命を捧げてまで恐怖新聞を読もうとは思わないでしょう。

親、兄弟、友達が標的となっていることで読まずにいられない気持ちに叩き込まれるのです。
この『恐怖新聞』が意外に支持を集めているようで、実写版の映画が製作されたり、
連載の最終回から20年以上経て、パートⅡの連載が始まったのです。
この記事で『恐怖新聞』をあらためて購読しょうと考える方もいらっしゃるかもしれないので、
物語の内容についての言及は避けたいと思いますが、
結末がしっかりしているところから、立派な作品と捕らえてよいと考えるのです。

ここ数年、『本当にあった怖い話』というTV番組が放映されています。
連続ドラマの切り替えのタイミングで、3時間くらいの枠を使っていますね。
タモリさんが、番組の初めと終わりをストーリーテラーとして締めるのです。
この『本当にあった怖い話』の前身が、『世にも奇妙な物語』。

 
ショートストーリを5本くらい集めたオムニバス形式を一貫して続けていました。
しかし、残念なことに、徐々にネタ切れ感が出てきてしまった。
ストーリーの落ちに捻り・切れがなくなり、ああもういいか、
と思いはじめた矢先に『本当にあった怖い話』に切り替わったように思えます。
しかし、プロデューサーにひとこと言いたいのです。

『本当にあった怖い話』はノンフィクションという生々しさに頼りすぎている。
ノンフィクションだから落ちは要らない。
あっと驚く意外な結末を準備する必要もない。
身の毛もよだつ戦慄さを前面に押し出して視聴者を引っ張る必要もない。
ただ、ただ、普通ではありえない、つまり科学では説明しきれない断片的な出来事を、
実話ですといって寸劇程度にドラマ化しているだけ。

あの番組をみていて、
実話なんだ~っと身の毛もよだつ恐怖心を楽しむ人が何人いるでしょうか、ってところですね。

ただ、録画しておいて真夜中の1時くらいに、闇と孤独のなかで見たら、案外プロディューサーの術中にはまってしまうかもしれません。

 

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